最初は堕ろすつもりだったが、
超音波にうつる胎児の姿を見て気が変わった。
そんなに長い付き合いだった訳でもなく、
まだハタチそこそこ、結婚どころか、
ただ楽しく付き合えていればいいという考えだったのに、
思いがけなく妊娠。
Tは、まだMと結婚するという気持ちはあまりなかった。
でも、妊娠してしまったから、
しょうがなく、結婚しなくちゃいけない、という気持ち。
そしてそれを、
母や姉につい、メールで愚痴ってしまっていた。
Tの両親は、Tが幼い頃に離婚していた。
Tには姉がいたが、2人はそれぞれ、
父親と母親に分かれて引き取られる事になった。
Tは父親に引き取られた。
そして、父親の実家で父親の両親、
Tの祖父母と暮らす事になる。
Tの父親は、仕事の為、別の場所で働き、
Tと暮らす事になったのは、離婚のずっと後だった。
離婚して、姉や母親と離れて暮らすようになっても、
女同士、仲は良く、時々連絡を取っていた。
祖父母は、Tに対して甘く、Tはワガママが多かった。
のちに父親と一緒に暮らす事になったが、
思春期特有の父親嫌いもあって、
父との仲は、決して良くはなかった。
なので、Mと知り合い付き合うようになると、
Mの家に入り浸りのような状態になったりもした。
Mは、高校時代から付き合っていた彼女がいたが、
彼女の家庭環境など、少々複雑な理由があって、
別れる事になってしまった。
何もなければ、結婚を考えていた。
恋愛としては、一番、まっすぐで素直なものだった。
その後、別の女性と付き合ったが、色々あって別れ、
その後、知り合ったTと付き合うようになった。
Tが妊娠したと知った時、
最初は堕ろさせるつもりだったが、
超音波の胎児を見て気が変わったTを見て、
Mも腹をくくる事にしたのだった。
子供が生まれるからには、結婚して責任を取るべきと、
Mは考えていた。
しかし、ある時、MはTの携帯を盗み見てしまう。
そこには、
Tが姉に宛てたメールがあった。
Mとの結婚は「仕方なく」することで、
子供が出来なければ、結婚する事はなかった。
結婚したくなかった。
そんな内容だった。
勝手に携帯電話を見てしまったため、
MはTを責める事は出来なかった。
Tは直接Mに、そう言う事を言う事はなかったので。
けれど、Mの中には、Tに対する不信感のようなものが芽生えてしまった。
みんなに祝福され、
盛大に結婚式を挙げたけれど、
Mの気持ちは複雑だった。
Tと一緒にいるのも辛く、
趣味のスポーツや仕事で、
家に居る事が少ない日々が続く。
そしてそれは、Tにとっては、
ますますMとの結婚を後悔する理由になった。
Mにしてみれば、
Tが嫌々、自分と結婚したのだと思い、
顔を合わせるのが苦痛で、仕事や趣味に逃げていた。
Tにしてみれば、
赤ん坊が生まれ、世話が大変なのに、Mは家に居る事が少ない。
Mの両親や兄弟(Mには姉と弟がいた)と同居している為に、
気を使ってストレスもたまる。
MとTはお互いに不満を持ち、
そして、ますますすれ違いが多くなっていった。

